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宵闇の魔法使いと薄明の王女 2−3
「そういえば、マリスディアはここまでどうやって登ってきたんだ?」「え?」「だってどう見ても、大人三人分くらいの高さがあるだろ?梯子もなさそうだし、どうやってここまで来たのかなって」「あ……、その」「あ!そうか、召使いみたいなのがここまで... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 2−2
「おーい!」 気がつけばジルファリアは声を上げて彼女に手を振っていた。「そこで何してんだー?」 そこまで叫んではたと口を塞ぐ。このような閑静な場所だと、自分の声が思った以上に響き渡っていることに気が付いたのだ。「これじゃ不審者じゃん」... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 2−1
二章;ひだまりの少女と黄昏の星 +++ 「えぇと、次の広場を右に曲がって……」 手元の紙片から目を上げ、ジルファリアはため息を吐いた。「広……、デケェぞ貴族街……」 そしてがっくりと項垂れる。 先刻、野菜売りの老婦からお使いを請け負って貴族街... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−8
「今日も教会はすごい人やな」 その様子を眺めていたサツキが感心したようにため息を漏らす。「んん?なんであんなに並んでるんだ?」「教会の娘の歌を聴きに来てるんちゃう?」「うぇぇ、オレはいいわ」「そうか?心を癒す歌なんて、そう滅多に聴ける... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−7
+++ 「しっかし、お前も安く見られたもんやなぁ」 堪えきれないといった風にサツキが笑う。 二人は街中の小道を縫うように走り続けていた。あれからダンの号令でカラス団の手下と見られる少年少女たちが追ってきているのだ。 「何が?」「いや、... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−6
ニヤニヤと馬鹿にしたような笑みが相変わらず嫌な感じだとジルファリアは舌打ちする。 「カラスの野郎どもか」「今日もいつもみてーに馬鹿ヅラだな、黒猫ジル」 背の高い方の少年がこちらを見下ろすように威圧的に笑った。「変なあだ名つけんな。そう... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−5
「おぅ、サツキ、おかえり。ジルも来てくれたんか。調子はどうや?」 古ぼけた木扉を開けた二人を出迎えたのは、サツキと同じ訛り口調をした赤ら顔のラバード=キリングだった。もしゃもしゃの髭が顎を縁取り、同じ質感のふさふさとした髪が暖かそうで... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−4
「やっぱりおっちゃんは炎の魔法がうまいんやなぁ」 サツキの言葉に我に返る。 目の前にいつの間にか置かれていた木皿の上にはアドレ特製のクラケットが山盛りに盛られていた。「へへっ、まぁパン屋だけにな。けど、これしきで上手いなんて思っちゃな... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−3
「サッちゃん、悪いね。そのへんに掛けといておくれ」 階下の店舗に足を踏み入れるなりアドレの朗らかな声が飛んできた。 店内にはふわりと焼きたてのパンの香りが漂っている。もっともジルファリアにとっては日常の風景なので、その匂いですら生活の... -
宵闇の魔法使いと薄明の王女 1−2
「今日はおっちゃんは?」 ジルファリアが思い出したように問いかける。“おっちゃん”というのは、サツキの父、ラバード=キリングの事だった。洗濯屋の主人でとても豪快な男だ。いつも陽気に大口を開けて笑う彼の事をジルファリアはとても慕っていた。...