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薄明の王女と宵闇の魔法使い 一巻 幕間
サイラスはそこに立っていた。 夕闇に溶ける街並みを眺めながら、手元に握りしめた黄金の羽根を眺めていた。 虚ろに光を失っているが、それでも美しい宝石のような瞳に羽根が揺らめいて映る。 まさか、こんなに巧く行くとは思っていなかった。 こ... -
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薄明の王女と宵闇の魔法使い 7−6
+++ もう何日そうしていただろう。 自室の寝床の上で、ジルファリアは膝を抱えた状態でずっと座っていた。 何度夜が来て朝が来ても、その表情が晴れることはなかった。 感情も何もかも捨ててしまったように、ぼんやりとした顔でずっとこうして... -
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宵闇の魔法使いと薄明の王女 7−5
+++ 一言で言えば、そこは“黒”だった。 一面すべてが真っ黒で、そして禍々しい空気を漂わせていた。 あの美しく居心地が良かった中庭は、もう影も形もなかった。 田園風景を思わせてくれていた野花や野草、彼女が一生懸命並べたのであろう煉瓦で... -
小説
宵闇の魔法使いと薄明の王女 7−4
周りの誰もが固唾を飲んで見守る中、ヒオは目を閉じ光の粒をウルファスに送り続けている。 次第にウルファスの顔色が赤みを帯びてゆき、短く呻く声がその唇から洩れた。 その声にヒオはふうと息を吐き瞳を開く。「ヒオ様、ウルファス様は……」 見守っ... -
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宵闇の魔法使いと薄明の王女 7−3
+++ ジルファリアは再び走り続けていた。 今度は母から逃げるためではなく、大切な友人を助けるためだ。 息を切らそうとも口の中が血の味で滲もうとも、その足を止める事はしなかった。 そんなことよりも、早く王宮へ着かなければという思いだけで... -
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宵闇の魔法使いと薄明の王女 7−2
どこをどう走っているのか、自分でも分からない。 ジルファリアはただ足を前へ前へと走らせた。 色々な思考と感情が混ざり合い、自分でもどうしたらいいのか分からなかった。 (母ちゃんの分からずや!なんでオレの気持ちを分かってくれねぇんだ) ... -
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宵闇の魔法使いと薄明の王女 7−1
七章;鈍色空と忘れ草 冷たい風が頬を撫で、ジルファリアはぶるりと身を震わせた。「前より明らか寒い日が増えてきたな」 そう言いつつも、けろりとした表情のサツキが片手を掲げる。木枯らしに吹かれて舞い上がった落ち葉を掴もうとしているようだ。「... -
小説
宵闇の魔法使いと薄明の王女 6−4
「そうだ!オレさ、これお前に返そうと思って持って来たんだ」 そう言うと、ジルファリアは自分のうなじに両手を回した。ぱちんと金具を外すと彼女に差し出す。「呼び声の雫」 マリスディアの言葉に頷くと、ジルファリアはそれを彼女の目の前に掲げた... -
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宵闇の魔法使いと薄明の王女 6−3
見張りの衛兵の死角となる植え込みまでやって来た二人は、傍に立つ大きめの木を見上げていた。この木は中庭の中でも王城外壁の近くに立っており、枝葉が時折風に揺れると城壁に触れるかといった距離だった。「まずはこの木を登るのよ」 そう言いながら... -
小説
宵闇の魔法使いと薄明の王女 6−2
「わ、すげ……」 ジルファリアは思わず感嘆のため息を漏らした。 マリスディアに連れてこられたのは、王宮の二階に位置する場所で、バルコニーと呼ぶには広すぎる場所だった。 庭園にしては二階に位置しているからか、空がとても近く感じられる。 一...